第1話-キアーヴェ・ディ・ソル


【華翠本部にて】

常日頃から忙しない帝国軍内で特別、殺気を放っている部署がある。帝国軍月血鬼討伐部隊、華翠の本部である。

それもそのはず、1か月後に行われる「月灯祭」への対策会議を行っているようで会議室の中からはあれやこれやと話し合っている声が聞こえる。

月灯祭というのは、豊作と繁栄を月の神様へ感謝する祭りであり、1年に1度この時期の満月の日に行われる。

今年の月灯祭は数百年に一度の赤い満月になると予想されており、国を上げて例年より盛り上がりをみせていた。

 

 

「だから暴力でなんでも解決するのはダメです〜東に偵察班を置いて定期的に監視するのはどうですか〜」

彼女は仮面を被らない。嘘のベールを纏うことは決して。

 

「オレはべつにそれでも構わないよ」

笑顔の裏に隠された本当の美しさは彼だけが知るのか。

 

「わ、私は私が皆さんの御迷惑にならないのであれば!ひぇ、す、すいません、私なんかが発言して!」

この力が誰かのためになるのならば。

 

「俺はそれよりも教会周辺の警備を強化した方が良いと感じるぞ。あそこは毎年ヴァリスの事件が多発するからな」

愛する者のためならばどんな犠牲も厭わない。

 

「え〜センパイ、教会周辺なら今のままの警備で良くない?」

氷輪の花が咲く時、誰が笑うのか。

 

「僕もそう思うな。もっと屋台がでる広場を中心に警備した方がいい」

例え一人でレッドカーペットを歩くことになっても。

 

 

あれやこれやと会話が続くが、最近の激務のためか皆疲れが感じられる。それもそのはず、毎年月灯祭前後ではヴァリスの犯行が頻発する。

 

 

そろそろ休憩しましょう。今お茶を入れてくるわ」

絶対に後悔しない道が存在するのならば彼女はどうしたのか。

 

「ああ、ありがとう、助かるよ」

 

人間は______

 

夜はまだ長いようだ。

 

【ルルリカにて】

夜。フェンリルはテーブルを拭きながら店の片付けをしていた。

どうやら今日はADELAの定例会の日らしい。自由気ままなあの幹部たちも足並み揃えて顔を合わせる数少ない日。

この数時間後のことを考えると少し頭が痛くなるのか頭を抱えていた。

「はぁ...

アーニャの姿のままで深いため息を着く。髪飾りがカラン、と音を響かせた。

 

「彼の方を迎えにいかなければ

 

ADELA基地内:個室にて】

「にゃ〜、にゃ〜んか面白いこと、ないかにゃ〜」

彼女はルールを好まない。彼女を侵害することは何人たりとも許されない。

 

「僕は自由にもっと楽しいことができればいいや」

狂気と美しさは共存できるのか、否。

 

「え、それよりも、今日はアニーちゃんに会えるかな」

もしもこの世に運なんてものは無くて、全て神様が仕向けたことならば。

 

「ちょっと〜メロンクリームソーダはどこ〜?」

協会で祈りを捧げることに意味はあるのだろうか。

 

メープルティ

無垢であることは白であるのか、白であることは正解なのか。

 

「あと来ていないのはそろそろくるはずなのですが

彼女は花園で誓う。花が散る前に。

 

 

幹部のメンツが顔をそろえていると言うのに、全く噛み合わない会話もそれぞれが好きなことをしているのも、なんともADELAらしいといえばらしい。するとバタン扉が開く音がし、全員がそちらへ目を向ける。

 

 

全く、珍しく全員早いと思えばこれか。ほら、メロンクリームソーダとメープルティー」

彼が求めたものは、平和か、復讐か、なにげない日常、なんて。

 

「それと...ボスがきた、みな背筋を伸ばせ」

 

「すまないね、準備に時間がかかってしまって。さあ、定例会をはじめよう」

 

ヴァリスは_____

 

 

少し欠けた満月が彼らを見下ろしていた。


シナリオ▶︎小林キラ